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限定合理性とは?エルスバーグの逆説を事例に解説

講義

みなさん、こんにちは。城西大学 現代政策学部の酒井宏平です。

  • ところで、人はどのようにものごとを決めているのでしょうか?
  • 組織はどのように、意思決定しているのでしょうか?

実は、人も組織も、合理的な意思決定をしていないと言われています。

そのことを理解するためには、「限定合理性」を理解することが不可欠です。

酒井
酒井

エルスバーグの逆説を事例に、限定合理性を解説しているので、勉強になりますよ!

動画でも視聴いただけます。

科学的・合理的アプローチの限界

酒井
酒井

まずは、限定合理性が誕生した背景から語ります。

1960年代に最高潮を迎えた科学的・合理的な政策決定のアプローチは、やがて破綻しました。

理由は、政策分析コストが莫大にかかったから。そもそも、予算を最適に分配するために政策分析を始めたのに、その政策分析のせいで予算が逼迫するようになったのです。

健康になるために高い健康食品を購入して、その購入用を稼ぐために睡眠時間を削って昼夜働き、食費を削って安いインスタント麺ばかり食べるものだから、どんどん健康状態が悪くなっている。
でも、こうして生きていられるのは、あの高い健康食品を摂取しているからに違いない!

そんな状況になっていたわけです。

さらに、こんな批判も出てきます。

そもそも、我人間は合理的に物事を考えて意思決定をしてるっけ?

いかに人間が合理的ではないかを、エルスバーグの逆説を事例に紹介します。

エルスバーグの逆説

中が見えない箱があります。

中には青いボールが30個、赤と黄色のボールが60個入っています。

緑と赤いボールはそれぞれ何個入っているかわかりません。赤が60個で、黄色が0個かもしれません。赤が30個で、黄色が30個かもしれません。それ以外かもしれません。

さて、今から選択肢が2つ提示されます。あなたならどちらを選びますか?

第1問

  • A:箱から1つボールを取って、青なら100ドルもらえる。
  • B:箱から1つボールを取って、赤なら100ドルもらえる。

さて、あなたは、AとBどちらを選びますか?

多くの人は「A:箱から1つボールを取って、青なら100ドルもらえる。」を選ぶと言われています。

第2問

  • C:箱から一つボールを取って、青か黄色なら100ドルもらえる。
  • D:箱から一つボールを取って、赤か黄色なら100ドルもらえる。

さて、あなたは、AとBどちらを選びますか?

多くの人は「D:箱から一つボールを取って、赤か緑なら100ドルもらえる。」を選ぶと言われています。

逆説と呼ばれる理由

AからDまでの選択肢を見比べて、A・BとC・Dの間にどんな違いがあるのかを見てみましょう。

  • A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。
  • B:箱から一つボールを取って、赤なら100ドルもらえる。
  • C:箱から一つボールを取って、青か黄色なら100ドルもらえる。
  • D:箱から一つボールを取って、赤か黄色なら100ドルもらえる。

太字で強調したとおり、CとDの選択肢は、AとBの選択肢に同じ数の黄色のボールが加わっているだけなのです。

つまり、第1問で「A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。」を選択したのなら、第2問ではAに黄色のボールが加わった「C:箱から1つボールを取って、青か黄色なら100ドルもらえる。」を選ぶのが自然です。

でも、多くの人はなぜか「D:箱から一つボールを取って、赤か黄色なら100ドルもらえる。」を選んでしまうのです。

不確実性を避けたい人間

なぜ「C:箱から1つボールを取って、青か黄色なら100ドルもらえる。」ではなく、「D:箱から1つボールを取って、赤か黄色なら100ドルもらえる。」を選んでしまうのか言うと、人間は不確実なことを避けたいと思って行動するからと言われています。

A〜Dの発生する確率は以下のようになります。

  • A:青なら100ドルもらえる:3分の1
  • B:赤なら100ドルもらえる:ゼロ〜3分の2
  • C:青か黄色なら100ドルもらえる:3分の1〜1
  • D:赤か黄色なら100ドルもらえる:3分の2

AとDははっきりと確率が定まっています。でも、BとCは、該当するボールの数が分からないので確率の範囲はある程度分かりますが、はっきりと決まっていません。これが不確実性です。

不確実なことを避けたいので、確率がはっきりと定まっているAやDを選択したわけです。

サイモンの限定合理性

人間は合理的ではないという1例としてエルスバーグの逆説を紹介しました。

近代経済学では、合理的なモデルを使って人間の行動を説明しようと試みて来ましたが、それには限界があることもわかりました。

そして、サイモンは、以下の3点から、限定合理性という概念を提案しました。

  • 人間は不完全な知識
  • 予期の困難さ
  • 認知の限界

つまり、人間は合理的ではないよ!と言ったのです。

こうして、政策学においても、科学的根拠や合理的意思決定に基づくアプローチの限界が明らかとなり、政治学的なアプローチが見直されるきっかけとなりました。

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酒井宏平の研究室:城西大学 現代政策学部